望遠鏡レンズ製造技術者・クラークの絵葉書


アルヴァン・クラーク(1804−1887)と二人の息子、ジョージ・バセット・クラーク(1827−1891)とアルヴァン・グラハム・クラーク(1832−1897)によって1846年に設立されたアルヴァン・クラーク社(Alvan Clark & Sons社)は、 19世紀後半に作られたアメリカの主要な天文台のほとんどに屈折用レンズと反射鏡を製造・納入しています。

特にウィスコンシン州ウィリアムズベイのヤーキス天文台に設置された101センチ屈折望遠鏡(1897年完成)の対物レンズは、 当時、世界最大で、これは1907年にウィルソン山天文台の1.5メートル・ヘール反射望遠鏡ができるまで世界最大であり続けました。現在でも屈折望遠鏡としてはヤーキス天文台の101センチ望遠鏡は世界最大です。

また、1894年に設立されたアリゾナ州フラッグスタッフのローウェル天文台の61センチ反射望遠鏡(1896年)やワシントンD.C.にあるアメリカ海軍天文台の66センチ屈折望遠鏡(1873年)、ヴァージニア大学マコーミック観測所の67センチ屈折望遠鏡(1885年)なども アルヴァン・クラーク社製ですが、これらの大型望遠鏡だけでなく、小型の家庭用(個人用)望遠鏡の製造も手がけており、天文趣味の普及に大いに貢献しています。

絵葉書には「精巧ナル望遠鏡レンズノ製造家」と印刷され、クラーク(一八〇八年生 米人)とありますが、アルヴァン・クラーク(父親)は正しくは1804年生まれです。 左側がアルヴァン・グラハム・クラーク、右は助手のカール・ランディンで、ヤーキス天文台の40インチ鏡を前にしての写真です。

Cosmic Journey(http://www.aip.org/history/cosmology/index.htm)というページでクラーク親子の写真をみつけましたので一緒に掲載させて頂きます。 ちなみに中央がアルヴァン・クラークで、右側が長男のジョージ・バセット・クラーク、左側が弟のアルヴァン・グラハム・クラークだそうです。(Cosmic Journeyさん、無断掲載すみません。)

・・・・で、ヤーキス天文台の絵葉書も載せておきます。

下の画像は、1907年の消印が押された通信面。まさに世界最大の座をウィルソン山天文台に譲ったその年です。

(注: ウィルソン山天文台の1.5メートル・ヘール反射望遠鏡の最初の観測は1908年12月8日)

消印の下部のWISはウィスコンシン州で、上半分は最初と最後の数文字のみ印字されていますが、どうやらウィリアムズベイのようです。 文面は「昨日、天文台を見てきたよ。」・・・、というようなことが書いてあるみたいです。

(追記)

Telescopes How To Make Them and Use Them(1966年・Macmillan社)という本に上の絵葉書と同じ写真を見つけました。

望遠鏡の歴史・自作法・各地の天文台紹介などが書かれた書籍で、この写真は第2章「Early Telescopes」のなかの「Alvan Clark and Sons」の項に掲載されています。

著者は、RALPH S.BATESで著者名の横に(The Telescope、July-August 1940)とありますので、多分これが初出の雑誌名と発刊年と思います。


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