乗鞍岳コロナ観測所絵葉書 高山市 高岡屋写真店発行


昭和23年8月12日と翌13日、東大の野附誠夫氏らによって我が国初めての日食外の太陽コロナ観測に成功。 使用機材は、五藤光学の6インチ赤道儀を改造した望遠鏡「コロナグラフ試作第3号機」でした。

観測場所は、乗鞍岳畳平の旧陸軍航空研究所ですが、ここは当時すでに廃屋となっていたため冬季を含む長期間の観測ができず、 恒久的な施設が必要とされ、数度にわたる調査行ののち、昭和24年4月に摩利支天岳頂上に決定、

この年の10月中旬、ドームをもった観測室(約5坪、階下は資材倉庫)と居住小屋(約9坪、寝台・炊事場・暗室など)が完成しました。

開所式は翌年(昭和25年)7月26日、乗鞍岳畳平においてなされています。初代所長・野附誠夫氏。ドーム完成後、五藤6インチ改造型赤道儀(コロナグラフ試作第4号機)が搬入・使用されましたが、 さらに翌年(昭和25年)9月に日本光学製10cmコロナグラフが導入され、以後、数々の実績を上げるに至っています。

昭和40年(1965)10月21日、このコロナグラフによって、太陽に接近する池谷・関彗星の写真が撮られたことにより、一般の方々にも「コロナグラフ」の名称が口の端にのぼったようです。

「乗鞍岳 8枚組」の絵葉書のうちコロナ観測所が写っている2枚を紹介いたします。

コロナ観測所より乗鞍岳頂上を望む

ドーム直径は4.5m。ドームの下は石積みの基部のようにみえますが、実際はドーム観測室を強風雪から守るための石垣です。 後方の乗鞍岳主峰(剣ケ峯)頂上付近の白い部分は、残雪のようです。春〜初夏に撮影したのでしょうか。

コロナ観測所と槍、穂高連峰の展望

絵葉書の最下部、やや左よりに見える赤い屋根の建物は山小屋の「肩ノ小屋」で、コロナ観測所はこの「肩ノ小屋」の左上方、北アルプス乗鞍山系摩利支天岳(まりしてんだけ)の頂上に位置しています。 この絵葉書では、左隅の上部に小さく赤いドームが見えています。

肩ノ小屋の左側空き地には、現在、東京大学宇宙線研究所付属乗鞍観測所(旧称 東京大学宇宙線観測所)がありますが、これは昭和30年夏(8月29日開所式) に建てられたものですので、この絵葉書の撮影はそれより以前と思ってよいでしょう。 また、この絵葉書集が収められた封筒には、第五種郵便 と印刷されていること(第五種郵便は、昭和26年10月に制定、11月1日から施行)と、夏山風景であることから推察して、撮影は昭和25年春から昭和30年までの間で、発行は昭和26年以降、恐らく27年〜29年と思います。


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